16,発展する文書宣教

 印刷業界は需要の多様化や省力化、スピード化に対応するため、従来の活版印刷体制から平判印刷体制への脱皮が大きな時流となってきた。活版印刷には文選や植字といったかなりの熟練した技術を必要とするが、こうした人材を確保・養成することが深刻化する人手不足や上昇する人件費のなかでますます困難となってきた。業界にとって”脱活版”はもはや避けて通れない道であった。
 社は創業いらい活版印刷ひとすじの道を歩み、人材、技術、設備ともその体制を一歩一歩築いてきたが、技術革新や変化する環境のなかで新たな段階に直面してきた。
 こうしたことからオフセット印刷機の導入が検討され、51年春には機種としてハイデル菊半裁判機を決定、6月29日に据え付けを完了した。
 従来の活版印刷機とは全く異なった操作技術を必要とするため、9月からは工務部門から2名を講習会に派遣、技術の習得につとめた。
 まずオフセット印刷の第一号として「大本のおしえ」を印刷したが、オフセット化が本格的に進行するのはそれから数年後のことであった。
 一方、「霊界物語」の全巻刊行やご神書その他出版物の増大にともなって在庫管理がいちだんとむずかしくなってきた。このため、8月24日にはかねて確保していた上矢田町の敷地に神具・書籍倉庫(建築面積約210平方メートル、スレート葺き1階)を完成した。
 また出版活動の面では聖師の「故山の夢」「霧の海」「青嵐」「浪の音」など懐古歌集を次々と復刊した。
 昭和53年5月26日の定時株主総会において、長らく代表取締役社長として文字どおり天声社を陣頭指揮してきた土居重夫が辞任、会長に就任した。
 土居重夫は昭和33年、土井三郎の後を継いで代表取締役に就き、草創期の厳しい環境下にあってその信仰的情熱と持ち前の几帳面さや努力家の面をいかんなく発揮し、20年にわたり経営の責任者として手腕をふるった。
 「霊界物語」「大本神諭」の刊行をはじめ積極的な出版活動を展開する一方、神具部門を軌道に乗せ経営基盤を強化するなどその実績は高く評価された。社はこの株主総会において倍額増資(無償)も決定した。
 後任の社長には大本本部財務部長(総務)の木田繁雄が兼務のかたちで就任した。木田は愛善苑新発足以前から奉仕活動に従事、発足後は瑞光社、天声社の総務・経理部門を一手に引き受け、引き続いて山川石太郎の後を継いで本部財務部長に就任していた。
 しかし木田は本部財務部長という要職を兼務して多忙なところから、編集部長の鈴木勇(取締役)を専務に迎えて、通常業務については鈴木が担当することとした。
 木田は社長に就任後、いちはやく”脱活版”の方針を打ち出し、印刷体制のオフセット化に本格的に乗り出した。
 木田はまずオフセット化の中心となる印刷機の買い替えを計画、54年9月には従来の菊半裁判機を処分し、念願のハイデルA全判機を導入した。以後このハイデルはオフセット進出の”核”としてめざましい活躍をみせることになったのである。
 昭和55年5月、三代教主喜寿の記念行事として「出口直日作品集」が刊行されることとなり、天声社は出版元(編集責任者・山本荻江)として54年から本格的な準備に入った。このお作品集は「陶芸篇」「書画篇」の2巻で構成する豪華上製本で、印刷は便利堂と日本写真印刷が担当した。
 社は予約を受け付けることとしたが、全国からは相次いで注文が寄せられ、その数は約2千組に達した。
 さて、ハイデル機の導入にともなうオフ化は昭和54年暮れ頃から一段と拍車がかかるようになり、「霊界物語」についても従来の鉛版による活版印刷からオフセット印刷に移行していった。しかし、組版部門については依然として活版体制であったため、やむを得ず「霊界物語」は校訂版を写真製版し、それによって印刷するのにとどまざるを得なかった。
 一方、機関誌についても54年12月号の「おほもと」誌からオフセット印刷を採用するようになり、従来は外注(サン印刷)していた出口虎雄のカラー表紙も社内で印刷するようになった。さらに引き続いて順次「愛善苑」誌、「木の花」誌、「楽天書道」誌もオフセット印刷に切り替えていった。
 木田は本部の総務・財務部長として多忙をきわめ、担当業務に専念することとなって56年5月26日の定時株主総会で代表取締役を辞任、後任として鈴木勇が就任した。
 鈴木はすでに3年間にわたり専務取締役として経営の実務にあたっており、木田の後を継いでオフ化を進めていった。また長年の編集者としての経験を生かし、機関誌の誌面の充実、刷新に取り組んだ。さらに大本神諭刊行会を中心に進められていた5巻本にかわる「おほもとしんゆ」(全7巻)の印刷部門の責任者としてその刊行に全力を傾注した。この「おほもとしんゆ」は大正6年から「神霊界」誌に聖師が発表したものを底本としたもので、昭和58年2月に第1巻を完成、翌年の2月には予定どおり全7巻を完成した。この「おほもとしんゆ」は発表以来、全国から注文が寄せられ、その数は5千組以上に達した。

《←前へ戻る》   《社史の目次》   《次へ進む→》


《TOPページ》